熱望されているオリジナル ノベルティ

コーチングを基本とした営業組織を作りあげてみようという私の夢に終止符が打たれてしまった。 その虚しさはとても口には言い表せないほどであった。
もう2年前から支社開発を始めていたら、というK室長の声が今でも耳に残っている。 支社開発プロジェクトが成功した要因を私なりに総括してみると、やはりコーチングを用いた採用から教育、マネジメントまでの一貫した仕組みを構築したことが大きいと考えている。
もう一つは、コーチングの持つモチベーションの力である。 支社開発プロジェクトの中心となっていた私は、コーチとしてコーチングの研修を各支社で行ったり、課題のある営業員一人ひとりにコーチングを実施したり、営業員の顧客のところへ同行して、仕事や人生について話を聞いたりしていた。
とにかく話をしたくなるように仕向けた。 常に笑顔で、「ネクタイいいね」「成績上がっているね」「何かない?」「変わったことある?」「楽しいことは?」「一生懸命電話しているね」と問いかけ、そして、褒めまくっていた。
醒めた視点に立てば、嫌らしいくらいだったかもしれない。 とにかく話しかけるネタを探していた。

職場の雰囲気を明るくしてモチベーションを上げてもらうためだ。 私ができる一番のことは、それだった。
改めて要約すると、コーチングとは「教える」ことよりも「聞く」、「質問する」ことに重点をおき、コーチをする相手が設定した目標やその達成手段などを尊重して、自発的な行動を促すコミュニケーションスキルである。 相手はコーチとの間で決めた課題につき、電話などで会話を進めながら、自分自身で課題を解決したり、行動予定を立てたりする。
実際には、最初はコーチに対して、現在自分が置かれている立場や環境などを話して、そこで最近課題となっている職場の人間関係や業績不振の件について答える。 こうしたことが、毎回のコーチングで繰り返されていくうちに、自分の行動目標をより具体的な形にしていくことができるのだ。
コーチングを行うことを、相手に知らせておくことも必要だ。 部下が、ある問題で煮詰まっていることが、机を接している上司(コーチ)の席から見えたとしよう。
その場で、話を始めるのではなく、部下に「ちょっとコーチングしよう」と気軽に声をかけて、会議室などへ場所を移し、白板などを使って、コーチングをしながら問題点の洗い出しをすると、意外と解決策がすぐに見つかるものだ。 コーチングによって、少しずつ小さな問題が解決するにつれ、徐々に大きな課題が解決していく。
その部下は毎回確実に前進することができる。 コーチングの主体は相手(クライアント)である。
コーチは相手から持っている良いものを引き出す。 誰でも成長したい、成功したい、勝ちたい、認められたいといった欲求を持つ。
コーチは、何をしたいかを明確にイメージさせるサポートをし、どのようにそれを達成するか考えさせ、達成プロセスを一緒に歩んでいく同士にもなる。 この過程には強制の側面はまったくなく、相手のモチベーションがアップすることを通じて、目標達成のスピードがアップするのである。
コーチ役の管理職の必要条件私の経験上、コーチをする管理職の第一の条件は、志の高さだと思う。 われわれは、「顧客の利益を最優先に」というビジョンを明確に掲げ、それについて全員で常に話し合いを行った。
話し合うことで、みんなで考えて、アイデアを出し合った。 私自身は、どうしたら顧客に喜んでもらえるのだろう?どうしたら顧客が加入した保障内容をわかって、安心してもらえるだろう?そのためには、どのような営業員を育てあげたらよいだろう?どうしたらその営業員を育てあげる幹部を養成することができるだろう?そのために私ができることは何だろう?と自問自答し続け、仲間と話し合い、そして実行してきた。

迷いが生じたら常に、「顧客にとっての利益を最優先に」と考えたらどうなる、と質問して英知を結集した。 私の新営業システムを実行させてくれた当時の武田社長から「志のない者は根無し草だ」と教わった。
志を掲げて全力で行動し、その上、質の高い人たちからその志への支援を受けて業務に取り組めば、必ずや業績の向上に結びつくはずだ。 採用から、営業の実践まで一本筋が通ったプレない方針・言動、それがコーチをする管理職の条件だと確信した。
途中で「何でそこまでやるのか、今までのやり方と全然ちがう、Hは偏っている」などと言われたが、客観的に業績を見れば、コーチングをベースにした私のマネジメントスタイルの効果はある程度は証明されたと思っている。 二番目の条件は、実際に行動するのは部下だ、と確信することだ。
実際に動いてもらえなければ、話し合いの意味はない。 大切なのはどうやって行動してもらうかだ。
私が言ったことで人は動くのではない、部下が気づいて動くのだ。 だから、常に部下がどう思うかを確認した。
所長なら「どんな人を採用したい?そのためにこの1週間でどういう行動をとる?あなたが思ったような行動をとれば、1週間後はどうなっていると思う?その時の成功要因を総括してみる気分は?」とコーチングした。 また、ある部下が成果の上がらない言い訳を始めた時、しばらくは冷静に聞きながら、この部下は何を言いたいのだろうか、と自問していた。
しばらくして、成果が上がらない自分のストレスの解消に、言い訳をしているのが伝わってきた。 そうか、自分で自己への信頼感を取り戻すために言い訳をしているのだな、と気がつく。
「よくわかったよ、成功したいだろう。 そのためにどう行動していくか、二人で考えよう」と提案して冷静になってもらい、共に考え、結果として行動してもらうようにならなければ、コーチしたことにはならないのだ。

最後の条件は真の意味で部下の味方になることだろう。 能力があると思って採用したとしても、成果が上がらない部下もいた。
生命保険の仕事に向かなかったのであろう。 しかし、常にその人の人生について関心を持っていたい。
本当にその人にとって、どのような道が向いているのかを考えることが、私は管理職の務めだと思っている。 退職したいと思っている営業員と話すことは、私にとっては心情的にもつらいことではあるが、それは仕方がない。
しかし、話を聞くことはできる。 何を言いたいのか。
話の本筋は何か。 本当に辞めたいのか。
その部下の置かれた状況を知り、気持ちを知り、その部下にとっての最良の決断ができるようにお手伝いをしようと心に決めておくと、部下は自ずと素晴らしい決断をしてくれるものだ。 心の底から味方になることこそ、コーチをする管理職に必要な条件である。
この営業員は、成績はトップクラスであったが、顧客の契約書類の記入・処理の仕方が悪く、契約をボッにしたり、翌月に流したりしたケースが多く、獲得するまではパーフェクトだが、その後のフォローが悪く、顧客を逃がしていた。 コーチングが機能する部下、しない部下では、「コーチングはすべての部下に有効に機能するか」という問いに対して、私の答えはNOだ。
もちろんほとんどの場合、多少は機能するが、それがビジネスの場面で迅速に高いパフォーマンスを上げるという意味においては、部下の能力ややる気の違いによってコーチングの成果も左右されるのだ。

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